神社仏閣専門家・坂原弘康の大仏講座(3)~コンクリート大仏の魅力~
―現在日本には何体くらいの大仏があるのですか
私が確認したものは約300体くらいですが、今も年々建立され続けていますので続々増えています。お寺や街のシンボル的、ランドマーク的に新しく造られることも多いみたいですね。中には個人で造られたものもありますよ。
―個人で造られた大仏があるのですか
私がとくに好きなタイプの大仏様として「個人が建立された手作り大仏」があります。
先に述べました通り、昭和に入ってからコンクリートが普及してきますと全国各地に高さ40メートル以上の「高層大仏」が建立されていきますが、そのような大規模なものでなくてもコンクリートを使って個人で仏像、そして大仏を建立することも増えてきました。コンクリートは粘土感覚で、プロの仏師でなくとも誰でも自由に仏像を作ることができる新素材だったんですね。
コンクリートの登場によって「大仏の大衆化」が始まったのです。
全国各地にそんな手作りのコンクリート大仏が造られていまして、その一体、函館の街の郊外に7メートルの大きさの達磨大師がいらっしゃいます。コンクリートという素材から連想すると男性の作者を想像してしまいますが、実はこちらの作者の方はおばあさんなんですよ。世界平和の願いをこめて建立されたそうです。ですので大仏様は気持ちさえあれば誰でも造れるんですよ。
達磨さんの特徴である赤い衣や黒い髭も色鮮やかに塗られ、表情もおだやかで親しみやすいです。そして正面から見るととてもふくよかな姿に見えますが、実は横へ回りますと…、意外にもこんなに薄いんです。まるで描き割り的な。正面から拝まれることを想定して造りましたのでこんなユニークな姿をしているんです。
プロの仏師には出せない味、まさに手造りならではの面白さだと思います。私の著書「大仏をめぐろう」では従来の仏像本では決して紹介されることのなかった、こうした手造りの大仏様をとくに取り上げて、その魅力を紹介しています。
こうした近現代のコンクリート大仏様を見て、新しくて手造りなので「変わってるなー」「色が派手だなー」(※色彩についての秘密は下に記載)と思う人もいるかと思いますが、今後何百年何千年も経っていったら昭和平成当時の信仰や文化を伝えるきっと貴重な遺産となると思いますよ。私の中では現在でも十分「国宝」ですけどね。
―なぜ仏像にコンクリートが使われるようになったのですか
高崎白衣大観音などが建立された戦前はコンクリートは最先端の素材と考えられていました。大正時代の関東大震災の時に木造の建物は倒壊した中でコンクリート造の建物はほとんど倒壊せずに残っていた。それを見てコンクリートはとても耐震性、耐火性にすぐれた永久性のあるものだと人々は評価したのです。コンクリートは、仏様の姿を永遠に残したい、そんな夢を実現させてくれる仏像を造るのにふさわしい「夢の新素材」と考えられていたのです。コンクリートの仏像も「塑造」の仏像なんです。
しかし実は意外に耐久性が短かったんですね。コンクリートの耐久性は何もしなければ最大で100年程度といわれています。水増しされたコンクリートを用いたり、何もメンテナンスをしなければ、風化が進んで数十年程度ということさえあります。
そのため適時メンテナンスを行い、ひび割れたところに補修をしたり、あとは表面のペンキの塗り替えが必要です。近現代のコンクリート仏像には表面が極彩色のペンキで塗られているものもありますので、一見「何だ、こりゃ。派手だなー」と思われる人が多いと思いますが、とても重要なことなんですよ。ペンキは表面のコーティングの役割もしていますので、雨風から守られて耐久性が抜群に増すわけです。
残念なことに既に老朽化して撤去されてしまったコンクリートの大仏様も何体かあります。
現在も淡路島に「淡路島世界平和大観音」という大観音がいらっしゃいますが、そちらも所有者の方が亡くなられて現在放置されてしまい、風化して崩れてしまいそうなことになっています。高さ100メートルもあるんですよ。なんとかして残していけたらいいんですが……。
―さらに今後大仏造りの素材として使われそうなものはありますか
最近では強化プラスチック「FRP」を用いた大仏様も登場しています。耐久性もいいですしね。一つの型で複数の像を造ることも可能です。これから注目の素材です。
―そんな素材まで!?それはどちらの大仏ですか
それは「大仏界のトップシークレット」です!
でもFRPといっても見た目は全然わかりませんよ。私は素材は木だろうが銅だろうがコンクリートだろうが何でもいいんじゃないかと思っています。造られた方の想いは素材を越える、そう思っています。
やはり大仏様がどのような祈りや願いをこめて造られたか、それが一番大事だと思っています。そういうところを“日本唯一の大仏専門家”として伝えていけたらと思っています。
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