静岡の布観音様めぐり
静岡県富士市の新豊院、富士宮市の大悟庵、沼津市の長谷寺で毎年春に行われる「布観音様」の御開帳に行ってきました。
いずれも大きな布に描かれた観音様で、静岡県東部に集中して伝わっています。
●新豊院(富士市)








新豊院の布観音様は縦45メートル、横18メートルの大きさで、布に描かれた観音様では日本一の大きさを誇ります。毎年3月に行われる「大観音大祭」で開帳されます。
大正13年(1924年)に昭和天皇のご成婚を祝して、縦40メートル、横17メートルの大きさの布観音様が信徒の方々によって奉納されたことに始まり、現在のものは1999年に複写された二代目とのこと。
観音様を描いたのは富士市出身の大村西崖氏(東京美術学校教授、平安神宮に獅子も奉納)です。
観音大祭当日はお寺の裏手の斜面で布観音様が開帳され、露店なども出て賑わっていました。
●大悟庵








大悟庵の布観音様は縦30メートル、横15メートル。こちらは十一面観音で、同じく毎年3月に御開帳されます。
初代のものは平安時代に弘法大師によって描かれたとも伝えられ、その後数代を経て、現在のものは昭和28年に再興されたものです。
隣接して織物の神様をまつる倭文(しどり)神社があり、もしかすると織物職人が祈願のために布観音様を奉納したことが始まりなのかもしれません。
こちらも開帳日はお寺の裏手の斜面に開帳された布観音様の前で法要が営まれ、地元の方たちによる接待も行われていました。
布観音様の前には美しい富士山が広がります。
●長谷寺










長谷寺は弘法大師開創と伝えられ、地元では「浜の観音さん」と呼ばれて親しまれています。
長谷寺という名前からわかるように、我が国の霊験仏信仰の一つである大和長谷寺の十一面観音信仰に基づいたもので、布観音様も大和長谷寺と同じく十一面観音です。正式には「百三十反観音大曼陀羅」といい、縦30メートル、横13メートルの大きさ。毎年4月に行われる春の観音大祭に開帳されます。
江戸時代の寛永8年(1631年)に小松周防守によって寄進されたという記録が残っており(初代は百二十反)、現在のものは昭和62年に復元された二代目です。
大和長谷寺の十一面観音といえば、三丈三尺六寸(約10メートル)の大きな姿で有名ですが、その大きさを画像で伝えようとしてこのような大きな観音図が制作されたのかもしれません。
ちなみに大和長谷寺には本尊と同じ大きさに描かれた十一面観音の大画軸(室町時代に描かれ、江戸時代に表装されたもの)も伝わっており、こちらも何らかの影響を与えた可能性も考えられます。
こちらには布観音様を広げられるような山は無いのですが、代わりに境内に広げるための台が組まれ、その隣に設けられた階段上より布観音様を参拝いたします。
また布観音様の下は「お久々利道」といって、胎内めぐりのように通り抜けられるような空間になっており、観音様の大きく優しいお顔を間近に拝することができます。
今回は富士市、富士宮市、沼津市に伝わる三体の布観音様をめぐりましたが、どこも大きな姿で人々を優しく見守り、そして人々に親しまれている素晴らしい観音様でした。
静岡県東部に集中して伝わっているのも大変面白い事象かと思います。上記で述べたようにいくつかその起源も推論できますが、また今後何かわかりましたらご報告できたらと思います。
静岡に春を告げる布観音様、ぜひお参りしてみてはいかがでしょうか。
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