プロフィール

  • 坂原弘康
    (神社仏閣専門家)


    群馬県高崎市出身(現在東京都在住)。
    「神社仏閣専門家」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など各メディアで活動。
    著書に日本初の大仏専門書『大仏をめぐろう』。


    メディアへの出演および取材協力、商業誌への執筆および取材協力など、各種仕事のお問い合わせは「依頼内容」「依頼料」を必ず明記の上、ご連絡をお願いいたします。
    (各種ご依頼は全て「有料」にて承ります)

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2019年5月29日 (水)

【神社仏閣専門家・坂原弘康の仏像講座】 近現代の大仏・大観音 ~夢の新素材 鉄筋コンクリート~

5月10日(金)に「神社仏閣専門家・坂原弘康の仏像講座 近現代の大仏・大観音」を開催いたしました。
皆様ご参加ありがとうございました。

 

今回の講座では「日本唯一の大仏専門家」の私ならではの知られざる近現代の大仏・大観音の歴史や文化についてお話いたしました。
その中から、私が一番伝えたかった内容である「近現代の大仏・大観音はなぜ鉄筋コンクリートで造られたのか」について、ブログでも紹介したいと思います。

 

 

近現代に建立された大仏・大観音の多くは鉄筋コンクリートを用いて造られていますが、鉄筋コンクリート造の大仏・大観音というと「なんだか工業的で、有難みがない」といった意見も時折耳にします。
たしかに従来の仏像の素材である木や銅、石といったものに比べれば、19世紀に登場した鉄筋コンクリートはまだ歴史は浅く、受け入れがたい方がいるのも仕方ないのかもしれません。

しかし、単に利便や目新しさだけで鉄筋コンクリートを大仏・大観音に用いたのではなく、当時の人々が鉄筋コンクリート造の大仏・大観音に託した大きな思いがあったのです。

 

我が国では古代から多くの大仏・大観音が建立されてきましたが、その歴史は地震や火災などの受難との戦いの歴史でもありました。

例えば、奈良の大仏は平安時代と室町時代に戦火によって二度も大仏殿もろとも焼失(その後江戸時代に再興)、鎌倉大仏も室町時代に地震で大仏殿が倒壊し、大正12年の関東大震災で大仏の台座が破損、東京の上野大仏も関東大震災で頭部が落下するなど、幾多の被害に見舞われてきました。

崩れない大仏燃えない大仏、そんな「夢の大仏」を造れたら……。それは人々の切なる願いであったに違いありません。

そこで注目された「夢の新素材」こそが「鉄筋コンクリート」なのです。

 

前述した大正12年の関東大震災によって、これまでの木造主体の建築はことごとく倒壊や焼失の被害を受けましたが、当時最先端の建築技術、建築素材である「鉄筋コンクリート」を用いた「帝国ホテル」(現在玄関部分が愛知県犬山市・博物館明治村に移築)に代表される鉄筋コンクリート造の建造物は被害が少なく、これをきっかけに耐震性、耐火性に優れた「鉄筋コンクリート」が一躍注目されるようになりました。

そんな「夢の新素材」を使えば、崩れない、燃えない「夢の大仏」が造れるにきっと違いない。

仏像の制作は、古代から現代に至るまで当時最先端の技術や素材を取り入れて、理想の仏像を造るために様々に進化してきました。
「夢の新素材」である「鉄筋コンクリート」で理想の仏像を造ってみようと思うのも当然の帰結かもしれません。

 

そして昭和2年、愛知県の実業家山田才吉は鉄筋コンクリートを用いて、奈良の大仏(像高14.98メートル)を上回る像高18.8メートルの「聚楽園大仏」(愛知県東海市)を建立することに成功いたしました。
これを皮切りに、昭和3年に「刈宿の大仏」(愛知県西尾市)、「別府大仏」(大分県別府市)、昭和7年に「庄川大仏」(富山県砺波市)、昭和11年に「護国観音」(埼玉県秩父市)など、鉄筋コンクリート造の大仏・大観音が全国各地に建立されていきました。

※補足
関東大震災以前にもコンクリートを用いた大仏の作例として、大正11年建立の「呼子大仏」(佐賀県唐津市)があります。

 

中でも群馬県の実業家井上保三郎によって建立された「高崎白衣大観音」(群馬県高崎市)は、総高41.8メートルの鉄筋コンクリート造の大観音立像の建立に成功し、当時「東洋一の大きさ」を誇る大観音としてその名を轟かせました。

 

このように当時最先端の技術と素材を用いて、信ずる「大仏さま」「大観音さま」の御姿を永久に残して伝えたいという人々の祈りと願いの心によって誕生したのが「鉄筋コンクリート造の大仏・大観音」なのです。

鉄筋コンクリート造の大仏・大観音の登場によって、大仏・大観音は「巨大化」「大衆化」の時代を迎え、全国各地で多種多様な大仏・大観音が建立されていったのです。

 

※その後の大仏・大観音の「巨大化」「大衆化」の時代については、以前にトークライブやブログで述べましたので下記をご参照ください。

坂原弘康の「仏像のミカタ」 仏像界のビッグスター“大仏”2 ご来場御礼

東京カルチャーカルチャー「仏像マニアックス4」ライブレポート(※外部リンク)

 

 

Daibutsukouza01
聚楽園大仏

 

Daibutsukouza02
刈宿の大仏

 

Daibutsukouza03
庄川大仏

 

Daibutsukouza04
護国観音

 

Daibutsukouza05
高崎白衣大観音と井上保三郎像 

 

しかし、当時は恒久的な「夢の新素材」と考えられていた鉄筋コンクリートも、残念ながら現在では耐用年数は最長で100年程度と考えられており、既に別府大仏など解体されてしまった大仏・大観音もあります。
まだまだ近現代の大仏・大観音への世間の関心は大変低いのが現状で、もしもこのままだと前世紀に建立された鉄筋コンクリート造の大仏・大観音たちは今世紀中に全て姿を消してしまうかもしれません

 

私自身も故郷の高崎白衣大観音に見守られて育ちました。

そんな「大仏さま」「大観音さま」と人々が共存する素晴らしい風景を後世へと守り伝えるためにも、これからも近現代の大仏・大観音の魅力を一人でも多くの方に伝えていきたいと思っています。

 

 

 

大仏様、巨神様めぐりの参考に
日本初の大仏専門書 「大仏をめぐろう」 (文・写真 坂原弘康)

 

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