群馬県立近代美術館「森村酉三とその時代」
高崎白衣大観音の原型制作者である鋳金工芸家・森村酉三の作品を紹介する展覧会「森村酉三とその時代」が群馬県立近代美術館で開催中です。
11月10日(日)まで。

展覧会の話の前に、森村酉三について紹介したいと思います。

森村酉三は伊勢崎市出身の鋳金工芸家で、数多くの優れた作品を残しています。
酉三の手がけた作品の中でもとくに知られているのが、高崎市のシンボル「高崎白衣大観音」の原型の制作で、観音様がまつられる慈眼院の境内にはその功績を称えて記念碑が建立されています。
ちなみに池袋にあった酉三のアトリエから井上工業(高崎白衣大観音建立者の井上保三郎の会社)の東京支店まで原型を自転車に乗せて運んだのは、実は当時井上工業の社員であった若き日の田中角栄首相であったという逸話もあります。

酉三は小説家・江戸川乱歩とも親交が深く、家も隣同士でした。乱歩の随筆「探偵小説四十年」にも酉三が登場し、高崎白衣大観音の原型制作者であることも紹介されています。
ちなみに乱歩の小説「少年探偵団」には高崎白衣大観音が登場しています。もしかすると酉三から高崎白衣大観音の話を聞き、小説に取り入れたのかもしれませんね。
さて今回の展覧会も私の一番のお目当ては「高崎白衣大観音」についての展示でしたが、これが大変興味深い内容でした。
実は酉三以外にも、別に原型制作を依頼された人物がいたとのこと。
井上保三郎は酉三に、そして後に井上工業二代目となる息子房一郎は彫刻家・清水多嘉示にそれぞれ原型制作を依頼しており、最終的に酉三の作品が採用されたそうです。会場には両者による高崎白衣大観音の原型が並べて展示してあり、歴史に埋もれかけていた幻のもう一体の観音像のことを知る良い機会となりました。
その他にも、「新田義貞像」「ペリカン銀香炉」などの様々な鋳金作品が展示され、改めて鋳金工芸家・森村酉三の魅力を知ることのできる展覧会でした。
「高崎白衣大観音」は、私にとっても神社仏閣専門家としての原点といえる存在です。
今回の展覧会を通じて、観音様の魅力を一人でも多くの方に再発見してもらえたらいいですね。
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